読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

本とパズルのブログ

人生は一冊の本である。人生は一つのパズルである。

王国

『王国』(中村文則) <河出文庫> 読了です。

『掏摸』の続編です。

正直なところ、『掏摸』の続編としてこの作品でなければならなかったか、というと甚だ疑問です。
しかし、『掏摸』の内容をさらに理解するには、この作品は読む必要があるでしょう。

この作品を読んで、『掏摸』では悪の象徴のように書かれていた木崎が、なんだか魅力あるキャラクタに思えてきました。
木崎シリーズとして、また続編を書いてほしいです。

太宰治全集8

太宰治全集8』(太宰治) <ちくま文庫> 読了です。

パンドラの匣」は終戦直後でも希望を失わずに生きていこう、という強い意志を感じる名作ですし、他の短編・掌編も好ましい作品が多いです。

しかし、「男女同権」から急に雰囲気が変わります。
人間の暗い部分、見たくない部分が現れてきます。

これまでもちょっといじけた作品は多々ありましたが、こんな嫌な暗さはありませんでした。
これから死に向かうまでの期間に、このような作品が書かれていくのでしょうか。
目が離せなくなってきました。

<収録作品>

パンドラの匣
薄明

親という二字

貨幣
やんぬる哉
十五年間
未帰還の友に
苦悩の年鑑
チャンス

たずねびと
男女同権
親友交歓
トカトントン
メリイクリスマス
ヴィヨンの妻
冬の花火
春の枯葉

雲と暮らす。

『雲と暮らす。』(武田康男) <誠文堂新光社> 読了です。

雲に関する著作が数多くある著者の、雲への愛が深く感じられる作品です。

図鑑では典型的な雲の写真ばかりで、普段目にする雲が何という名前か判断に迷うこともありますが、この作品は普段よく見る雲の写真ばかりで、「ああ、この雲はこの名前か」というのがよく分かります。
また、その雲がどんな雲なのかも一言添えられていて、雲に関する理解が深まります。

海外の雲も紹介されていて、日本の雲と比べてどう違うかの説明もあり、非常に興味深く読めました。

図鑑ばかりでなく、こういう作品もいいものです。
雲がお好きな方にはおすすめです。

悪と仮面のルール

『悪と仮面のルール』(中村文則) <講談社文庫> 読了。

最初はなかなか物語に入っていけなくてどうなることかと思ったが、「第三部」に入ってから面白くなってきた。

中村文則は一貫したテーマを持っていて、この作品もその中で何とか答えを出そうとしているように読める。
それが成功しているかどうかはまた別の問題として。

しかし、それにしても何かと饒舌すぎるように思われる。
もうちょっと落ち着いてはどうかな。
作品自体も、第三部から入って全く問題ないように思う。
というか、第一部、第二部は書きすぎ。
第三部以降もちょくちょくそんな感じがする。

太宰治全集7

太宰治全集7』(太宰治) <ちくま文庫> 読了。

長編「津軽」「惜別」と、短編集「お伽草子」が収録されている。

津軽」は作者の地元愛がしみじみと感じられる傑作。
初期の「富嶽百景」に匹敵する印象を受けた。

「惜別」は私と中国人留学生と先生と、そして数人の友人たちとの交流を描いた、これも傑作。
同じ時期の長編「津軽」とはまた違った良さを感じた。

あと、「お伽草子」は太宰の心を自分で癒すために書いたのかな、といった感じ。
津軽」「惜別」からぐっと力の抜けた作品で、続けて読むとかなり違和感があるが、まあ、なかなか面白い作品に仕上がっていた。

掏摸

『掏摸』(中村文則) <河出文庫> 読了。

「スリ」と読む。

スリはもちろん犯罪だが、その驚くべき技術に感心もし、どこか滑稽味も感じる、とても不思議な犯罪だ。

しかし、この作品は「スリ」という言葉から想起されるイメージよりもずっと暗く、ただただ重たい作品だった。
この作品を読んでいる間、ずっと食欲がなかったぐらいだ。
もし、最初の中村文則作品がこの作品だったら、その重たさに、これ以上はもう読まなかったかもしれない。

それでも、これは傑作である。
日本だけでなく、アメリカでも高く評価されていることに素直にうなずける。

ただ、木崎の描かれ方には違和感を覚えた。
「悪」の象徴としてはなんだか軽い。
簡単に人前に出るし、饒舌に過ぎる。
ひょっとしたら、彼は「悪」ではないのではないか、とも思った。
彼は、彼自身が口にした、「神」とか「運命」なのではないか。
そんな風に考えると、何だかしっくりくるような感じがする。

この作品には『王国』という続編がある。
もちろん、楽しみに読む予定。

太宰治全集6

太宰治全集6』(太宰治) <ちくま文庫> 読了。

この巻は何といっても大作「右大臣実朝」が問題になる。
太宰治が実朝に惚れこんで、吾妻鏡を基に書かれた作品。
かなり思い入れがあって力を入れて書いたんだろうな、という雰囲気は十分感じられるが、私にはその面白さが分からなかった。
実朝のことを全く知らないからだろうか。

その他の作品は太宰治らしさが存分に出ていて面白く読めた。
特に、「新釈諸国噺」はとても楽しい作品。
どこまでが西鶴のストーリーで、どこからが太宰のストーリーなのか気になる。

「竹青」は「自註。これは、創作である」と書かれているが、実際に聊斎志異の中にあるらしい。
でも、この話、最近読んだような気がする。
「黒衣隊が欠けているから採用する」とか、黒衣を掛けられると烏になるとか。
思い当たるとすれば芥川龍之介なんだが、なんだったかなあ。

<収録作品>

鉄面皮
赤心
右大臣実朝
作家の手帖
佳日
散華
雪の夜の話
東京だより
新釈諸国噺
竹青