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本とパズルのブログ

人生は一冊の本である。人生は一つのパズルである。

抱擁家族

『抱擁家族』(小島信夫) <講談社文芸文庫> 読了。最初はなかなか入り込めなかったが、最初の話題から次の話題に移ったころから俄然面白くなり、そこからは最後まで興味深く読むことができた。淡々とした文体は、誰が何をしゃべっているのか分からなくなるく…

遮光

『遮光』(中村文則) <新潮文庫> 読了。デビュー二作目。一作目の「銃」と同じく、日常に紛れ込んだ異物によって毀されていく様子が描かれている。しかし、「銃」が次第に毀されていったのに対し、この作品では初めから毀れていた様子が伺える。いずれにしろ…

芥川龍之介全集5

『芥川龍之介全集5』(芥川龍之介) <ちくま文庫> 読了。「六の宮の姫君」は有名ですが他はあまり聞かない作品が多い。しかし、人間模様を描いた、このころの作品が私には好ましく思われた。小説は次の第六巻で終わり。これから死へ向かう時期にかけて、どの…

『銃』(中村文則) <河出文庫> 読了です。「銃」と「火」が収録されている。「銃」はとにかくものすごい! 拳銃によって毀れていく様子が一人称で語られていくその手法は、やはり中村文則でしか書けなかったんじゃないかと思わされる。読後はぞわっと鳥肌が立…

芥川龍之介全集4

『芥川龍之介全集4』(芥川龍之介) <ちくま文庫> 読了。流石にこの時期になるとかなり熟している作品が多く、味わい深く読むことができた。「杜子春」や「往生絵巻」、「藪の中」といったよく知られた作品も多いが、あまり聞かない作品の中にも、「捨児」「…

芥川龍之介全集3

『芥川龍之介全集3』<ちくま文庫> 読了。「蜜柑」を除いてはあまり有名ではない作品ばかりだが(私が無知なだけかもしれないが)、「沼地」「疑惑」「路上」(完成しなかったのが惜しい)等々、傑作も数多く収録されている。いろんなタイプの作品を描き分ける芥…

乳と卵

『乳と卵』(川上未映子)<文春文庫> 読了。ずっと女性の性が赤裸々に綴られていて、やっぱり男の私としては辛いものがあった。しかし、最後のあの爆発!これで一気に印象が変わった。最初からの流れをうまく汲み取りながら、最後のあのシーンにつなげるセンス…

芥川龍之介全集2

『芥川龍之介全集2』<ちくま文庫> 読了。第一巻ではやや「書き過ぎ」のきらいがあったが、第二巻では明示するのではなく、文脈の中で読者が自身の考えを持てるようにうまく書かれてあるように思われた。「或日の大石内蔵助」や「戯作三昧」のように、人の心…

タイニー・タイニー・ハッピー

『タイニー・タイニー・ハッピー』(飛鳥井千砂)<角川文庫> 読了。何気ない日常を作品として描くのはとても難しいものだから、作者の力ではやや足りなかったかな、と思った。とはいえ、大型ショッピングセンター「タイニー・タイニー・ハッピー」を舞台に、人…

4522敗の記憶

『4522敗の記憶』(村瀬秀信)<双葉文庫> 読了。弱い球団であることは十分認識しているが、まあ、こんなにダメダメ球団だったってことを改めて思い知らされた。DeNAに買収され、中畑監督になったときはものすごい違和感があった。でも、本当のよくやってくれた…

ガードナーの数学娯楽

『ガードナーの数学娯楽』(マーティン・ガードナー/岩沢宏和,上原隆平監訳)<日本評論社> 読了。「完全版マーティン・ガードナー数学ゲーム全集」の第二巻。相変わらず興味深い問題が沢山取り上げられていて、とても楽しく読むことができた。以下、ざっと内容…

天獄と地国

『天獄と地国』(小林泰三)<ハヤカワ文庫> 読了。短編で読んだ方はネタがばれてしまっているが、短編はあくまで「物理学小説」だった。これはきちんと「SF小説」になっていて、短編の時と比べて読みどころ満載である。短編で読んだ方にも十分楽しめる内容にな…

ツ、イ、ラ、ク

『ツ、イ、ラ、ク』(姫野カオルコ)<角川文庫> 読了。子供の成長に合わせ文体を変えてみたり、表現に工夫を凝らしたりしているところがとても好感がもてた。こういう、「この作家ならでは」と思わせるところのある作家がとても好きだ。しかし、女性視点での女…

戦争と平和

『戦争と平和』[全四冊](トルストイ/工藤精一郎訳)<新潮文庫> 読了。充実した読書時間を過ごすことができた! というのが第一感。去年から今年にかけての「年越本」に選んだのだが、読み終わったのが結局今になってしまった。ロシアの長編小説というと、何だ…

芥川龍之介全集1

『芥川龍之介全集1』<ちくま文庫> 読了。 明記されていないが、発表順に収録されているようだ。この時期の作品は、ちょっと書き過ぎかな、と思われるものが多く見受けられた。もう少し判断や解釈を読者に委ねてもいいのかな、と。とはいえ、すでに「羅生門…

abさんご・感受体のおどり

『abさんご・感受体のおどり』(黒田夏子) <文春文庫> 読了。 とにかく、個性的な作品。作者以外のだれもこのような作品を書けないだろう。どちらも長くても二ページ程度の節からなっているのだが、こんな特徴がある。・固有名詞が出てこない。 (「感受体の…

アフターダーク

『アフターダーク』(村上春樹) <講談社文庫> 読了。 会話文や書かれている内容は村上ワールドだが、文体が普段の村上春樹と全く異なっているので、「村上春樹を読みたい」と思ってこの作品を手にとった方は戸惑うかもしれない。私には映画の脚本のようなイメ…

江戸川乱歩全集第1巻 屋根裏の散歩者

『江戸川乱歩全集第1巻 屋根裏の散歩者』(江戸川乱歩) <光文社文庫> 読了。 この全集はほぼ発表順に収録されているので、ここには処女作「二銭銅貨」をはじめ、初期の短編・掌編が収録されている。江戸川乱歩の作品は、小学生のころ少年向けのものをいくつ…

ガードナーの数学パズル・ゲーム

『ガードナーの数学パズル・ゲーム』(岩沢宏和,上原隆平監訳) <日本評論社> 読了。 「完全版マーティン・ガードナー数学ゲーム全集」の第一巻。あまり数学の知識のない方にも十分興味を持てるように易しく書かれているが、「追記」や「付記」が充実しており…

東京奇譚集

『東京奇譚集』(村上春樹) <新潮文庫> 読了。 五編からなる短編集です。どの作品も、あることをきっかけに生き方のようなものが変化したことを表す物語のように思った。まあ、中には「どこであれそれが見つかりそうな場所で」のように、「きっかけ」を探して…

ヘンリ・ライクロフトの私記

『ヘンリ・ライクロフトの私記』(ギッシング/平井正穂訳) <岩波文庫> 読了。 作家家業がうまくいかず、ずっと貧困に苦しんでいた"作者"が、友人から遺産年金を送られ、田舎で悠々自適の暮らしを満喫できるようになった、という内容。これだけの紹介だとなん…

神の子どもたちはみな踊る

『神の子どもたちはみな踊る』(村上春樹) <新潮文庫> 読了。 阪神・淡路大震災を契機に書かれた短編集で、どの作品にも少しずつこの地震が出てくる。しかし、決して暗い話ではなく(深刻ではあるかもしれないが)、未来への希望やユーモアさえも感じられるも…

螢・納屋を焼く・その他の短編

『螢・納屋を焼く・その他の短編』(村上春樹) <新潮文庫> 読了。 初期の短編集。長編はほぼ発表順に読んでいるので気づかなかったが、初期のころは結構暗い話が多かったんだなあ、と思った。もちろん、当時から村上ワールドは炸裂だ。あとがきで、最後に「小…

回転木馬のデッド・ヒート

『回転木馬のデッド・ヒート』(村上春樹) <講談社文庫> 読了。 小説ではなく、また、完全な事実だけでもないものを、作者は「スケッチ」と呼んでいる。この作品は、小説になれなかった八つのスケッチを集めたもの。読んでみると、「原則事実に即している」と…

寝ても覚めても

『寝ても覚めても』(柴崎友香) <河出文庫> 読了。 とにかく、ものすごい描写力に驚いた。光を、色を、風を、窓を、夜を、そして季節を、これほどまでに描写できる作家は彼女しかいないかもしれない。一言一句も逃したくないため、それこそむさぼるように読み…

中国行きのスロウ・ボート

『中国行きのスロウ・ボート』(村上春樹) <中公文庫> 読了。村上春樹初の短編集。中編、長編は書いていたとはいえ、短編はまた違った難しさがあるだろうと思うのだが、もうすでに完成されているように感じられる。短編「中国行きのスロウ・ボート」の悲哀は…

カンガルー日和

『カンガルー日和』(村上春樹) <講談社文庫> 読了。 17の掌編と一つの短編集。あとがきには「23編」と書かれているので、文庫落ちするときに5編が除かれたようだ。掌編とはいえ、村上ワールドいっぱいの作品ばかりなので、結構お腹いっぱい。短編は「図書館…

泥の河・螢川・道頓堀川

『泥の河・螢川・道頓堀川』(宮本輝) <ちくま文庫> 読了。 「泥の河」は子供の頃映画で観てトラウマになってしまった作品。読むのに勇気が要ったが、こんなにいい作品だったとは!子供の視点と大人の視点がうまく入り混じり、何とも言えない心地よい悲哀を感…

うたかた/サンクチュアリ

『うたかた/サンクチュアリ』(吉本ばなな) <新潮文庫> 読了。 久しぶりのばなな作品だったので、最初はなかなかとっつき難かったのだが、馴染んでくると、彼女独特の表現が非常に心地よく、楽しく読むことができた。この表現力は本当に「ありそうでない」よ…

ちくま日本文学 004 尾崎翠

『ちくま日本文学 004 尾崎翠』(尾崎翠) <ちくま文庫> 読了。 『第七官界彷徨』<河出文庫> が非常に面白かったので、他の作品も読んでみたくてこれを読んでみた。 小野町子シリーズ・こおろぎ譲・地下室アントンの一夜・歩行・第七官界彷徨・アップルパイの…

風と共に去りぬ

『風と共に去りぬ』[全五巻] (マーガレット・ミッチェル/ 大久保康雄,竹内 道之助訳) <新潮文庫> 読了。 読む前は、アメリカ南北戦争を舞台とした恋愛小説というイメージを持っていて、積読処理のつもりだった。しかし、読んでみるととんでもない!南北戦争…

春琴抄・吉野葛

『春琴抄・吉野葛』(谷崎潤一郎) <中公文庫> 読了。 谷崎というと「美しい文章」というイメージがあったが、私には「素直な文章」という印象を受けた。全くどこにも引っかかりがなく、ごく自然に読んでいけるのだ。しかし、これが当たり前のことだと思っては…

海辺のカフカ

『海辺のカフカ』[全二冊] (村上春樹) <新潮文庫> 読了。 久々の村上作品です。疲れを感じた。もちろん、心地よい疲れだ。村上春樹って、こんなに濃い作風だったかな。もっとライトな感じだったと思うのだが。以前は「意味あり気」なのが面白くて読んでいた…

熊の敷石

『熊の敷石』(堀江敏幸) <講談社文庫> 読了。 主人公の生活が細かく淡々と語られ、一体どこに向かっているのか不安で仕方がなかった。というか、正直退屈ですらあった。しかし、今までの積み重ねから突然ピークが現れ、深く心を揺さぶられる。それでもまだま…

月の名前

『月の名前』(高橋順子,佐藤秀明) <デコ> 読了。 「まほろば歳時記」第四弾。「月」というとそれだけで情緒があるが、本一冊書けるのかなあ、という気もする。しかし、いろんな「月」が集められ、うまく構成された作品だった。写真もいろんな月が写されてお…

太宰治全集1

『太宰治全集1』<ちくま文庫> 読了。 ずっと以前に『人間失格』を読んだのだが、その時はピンと来なかった。それでも、多くの人に好意的に読まれている事もあり、消費税増税の前に思い切って購入した全集だ。前に読んだ三島由紀夫の『仮面の告白』が非常に…

風の名前

『風の名前』(高橋順子,佐藤秀明) <小学館> 読了。 「まほろば歳時記シリーズ」の第二弾。前作より和歌や俳句が数多く取り入れられており、より情緒的になっている。例えば----------鹿の角落とし(しかのつのおとし) : 晴れた日中に吹く南西風のことで、山口…

ナボコフの文学講義

『ナボコフの文学講義』[全二冊](V・ナボコフ/野島秀勝訳) <河出文庫> 読了。 この作品では次の七作品が講義されている。■ ジェイン・オースティン『マンスフィールド荘園』■ チャールズ・ディケンズ『荒涼館』■ ギュスターヴ・フロベール『ボヴァリー夫人』…

雨の名前

『雨の名前』(高橋順子,佐藤秀明) <小学館> 読了。 まほろば歳時記の第一集。さまざまな雨の名前を四季ごとに集め、簡単な解説が付けられている。例えば、■春霖(しゅんりん) : 春霖雨(はるりんう)ともいう。こまかく烟るように降りつづく三、四月ころの長雨…

塩一トンの読書

『塩一トンの読書』(須賀敦子) <河出文庫> 読了。 くねるような文体がなかなか頭に入ってこず、文字を目で追うだけでいつの間にか半分ぐらい読み進めてしまった。「これじゃいかん」と、最初に戻ってもう一度丁寧に読み直してみた。するとどうだ。一文の中に…

新解さんリターンズ

『新解さんリターンズ』(夏石鈴子) <角川文庫> 読了。 新明解国語辞典の六版に伴い、五版以前から六版への変更点を調べた作品です。 作者の新明解国語辞典への思いは、「新解さんエッセイ」中の----------『新明解国語辞典』は姿は辞書だけど、本当は新解さ…

せどり男爵数奇譚

『せどり男爵数奇譚』(梶山李之) <ちくま文庫> 読了。 本に魅入られた男の短編集。あっと驚くような展開が待っているわけでもなく、淡々と話が続いて行くが、本が好きな方なら「分かる分かる」とニヤニヤすること間違いなし。神保町で見かける古書店なんかも…

一九八四年

『一九八四年』(ジョージ・オーウェル/高橋和久訳) <ハヤカワepi文庫> 読了。 いかに「情報」が大事か。「情報」に付随する「解釈」をそのまま受け取ることなく、あくまで参考にして、自分で解釈することがとても重要なことである。できれば、「情報」のソー…

思考の整理学

『思考の整理学』(外山滋比古) <ちくま文庫> 読了。 自力で飛ぶことのできないグライダー人間を育てる学校教育の弊害は昨今よく言われている事だし、「朝起きたら問題が解けていた」という経験をしたことがある人も少なからずおられると思う。そんな調子で始…

マダム・エドワルダ/目玉の話

『マダム・エドワルダ/目玉の話』(バタイユ/中条省平訳) <講談社古典新訳文庫> 読了。 いずれも「エロチック」という言葉だけでは表せないような内容だ。ただのエロチックでもないし、エロチックだけでもない、としか言いようがない。「マダム・エドワルダ…

翔太と猫のインサイトの夏休み

『翔太と猫のインサイトの夏休み』(永井均) <ちくま文庫> 読了。 副題に「哲学的諸問題へのいざない」とあるように、哲学の入門書。哲学というと、当たり前のことをわざとややこしく考えて小難しいことを言うようなイメージがあったが、この作品は全然違う。…

奇妙な本棚

『奇妙な本棚』(伴田良輔) <ちくま文庫> 読了。 著者の本棚にある本が紹介されている。紹介されている本はほとんどが写真集で、あとは絵本、画集、雑誌などが少しあるくらい。タイトルにあるとおり、紹介されているのは「奇妙な」本が多い。排泄物の写真集、…

銀の匙

『銀の匙』(中勘助) <岩波文庫> 読了。 最初は全然響いてこなくて、どうなることかと思った。確かに幼児のみずみずしい感性が丁寧に描かれているとは思ったが……。しかし、半分ぐらい読んで、主人公の人間関係が少し広がってきたころから俄然面白くなってくる…

第七官界彷徨

『第七官界彷徨』(尾崎翠) <河出文庫> 読了。 タイトルから耽美な作品を想像していたのですが、全く違った。どこか北杜夫やクラフト・エヴィング商會を感じさせる、非常にユーモアに満ちた作品だ。兄二人と従兄弟との共同生活をする「女の子」の、なんともコ…

仮面の告白

『仮面の告白』(三島由紀夫) <新潮文庫> 読了。ものすごい本に出会った! と、とても興奮している。毎日朝起きるとこの本が読めると思ってワクワクしていた。そして読む度に深い溜息をついた。ずっと「三島由紀夫はピンと来ない」と思っていて、「この本を最…