第七官界彷徨
タイトルから耽美な作品を想像していたのですが、全く違った。
どこか北杜夫やクラフト・エヴィング商會を感じさせる、非常にユーモアに満ちた作品だ。
兄二人と従兄弟との共同生活をする「女の子」の、なんともコミカルな日常が描かれている。
とはいえ、登場人物はみな真剣。それがまた面白い。
ちょっとした事物が繰り返し述べられるのが印象的である。
そのときそのときの登場人物たちの感情の変化を測る物差しになっているのかもしれない。
驚くべきことに、この作品は昭和六年に書かれたらしい。
そうとはとても思えない、現代でも十分に通用する作品である。
心の奥に何かがじんわり伝わってくるような不思議な作品だ。