江戸川乱歩全集第1巻 屋根裏の散歩者
『江戸川乱歩全集第1巻 屋根裏の散歩者』(江戸川乱歩) <光文社文庫> 読了。
この全集はほぼ発表順に収録されているので、ここには処女作「二銭銅貨」をはじめ、初期の短編・掌編が収録されている。
江戸川乱歩の作品は、小学生のころ少年向けのものをいくつか読んだきりだった。
正直言うと、妖しい雰囲気は感じられるものの、当時はそれほど興味を惹かれたわけではない。
ただミステリを読みたかっただけで、そういう観点からすると、むしろ「イマイチかな」とすら思っていた。
しかし、大人になって光文社文庫から江戸川乱歩全集が出ると聞くと、どうしても買っておかなければならないような気がして、最初の刊行からずっと出る度に購入していた。
それをようやく今読んだわけだ。
確かにミステリとしては古臭い上に不十分で、あまり面白いとは言えないが、子供のころ感じたあの「妖しい雰囲気」が大人になってガッツリ感じられるようになり、引き込まれるように読んでしまった。
収録作品すべてに「自作解説」がついていて、それによると江戸川乱歩自身は決して満足のいく作品が書けたわけではないようなのだが、読む側としては全然そんなことはない。
すべての作品が魅力的でワクワクしながら読むことがでる。
この全集も先物買いのような感じだったが、本当に買って良かったと思う。
大正時代から作品を発表している江戸川乱歩が今なお広く読まれている理由が十分納得できる。
<収録作品>
・二銭銅貨
・一枚の切符
・恐ろしき錯誤
・二癈人
・双生児
・D坂の殺人事件
・心理試験
・黒手組
・赤い部屋
・日記帳
・算盤が恋を語る話
・幽霊
・盗難
・白昼夢
・指輪
・夢遊病者の死
・百面相訳者
・屋根裏の散歩者
・一人二役
・疑惑
・人間椅子
・接吻