本とパズルのブログ

人生は一冊の本である。人生は一つのパズルである。

プールサイド小景・静物

『プールサイド小景・静物』(庄野潤三) <新潮文庫> 読了。

最初に収録されている「舞踏」から、いきなり魅了された。
この感性はすごい!
小説だが、一篇の詩を読んでいるようだ。

どの作品も、日常にしっかりと足を下しながら、しかも日常に潜む密かな非日常をかすかに匂わせている。
日常の中にしっかりと非日常を描き出す村上春樹と対比させると面白いかもしれない。
私は、村上春樹が好きな方はこの作品集も好きになれるんじゃないかと思ったが、どうであろうか。

実は、村上春樹自身が庄野潤三の初期作品を高く評価していて、その最高峰に「静物」を挙げているらしい。
村上春樹の言う、「優れた作家は大事な部分を書かない」を地で行く作家だと思う。

安岡章太郎とはちょっと合わなかったが、小島信夫、そしてこの庄野潤三と、いわゆる「第三の新人」とは波長が合うのかもしれない。
積読している小沼丹も楽しみだ。

また読んでみたくなる作家が増えた。

 

<収録作品>

 

・舞踏

・プールサイド小景

・相客

・五人の男

・イタリア風

・蟹

・静物