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本とパズルのブログ

人生は一冊の本である。人生は一つのパズルである。

迷宮

『迷宮』(中村文則) <新潮文庫> 読了です。

相変わらず暗く陰鬱な作品ですが、とても濃密な内容です。
『掏摸』や『王国』、『悪と仮面のルール』で感じた饒舌は消えていて、そういう点ではとてもすっきりした印象を受けました。

紗奈江の告白は余計かな、とも思いながら読んでいたのですが、その後の展開には必要なものでした。
でも、他の作者ならもうちょっとうまく処理できたかも、という感じです。

P56の「遠くでサイレンの音が鳴る」という一文は『箱男』のラストを、真相に届くことのできない事件に巻き込まれるという大枠は『燃えつきた地図』を連想させ、もしかすると安部公房を意識した作品なのか、とも思いましたが、まあ、それは思い過ごしでしょう。

この作品も面白く読むことができました。
今まで読んだ中村作品の中でも上位を争いそうです。

迷宮