本とパズルのブログ

人生は一冊の本である。人生は一つのパズルである。

去年の冬、きみと別れ

『去年の冬、きみと別れ』(中村文則) <幻冬舎文庫> 読了です。

作品中でもたびたび言及されている、芥川龍之介の『地獄変』にインスパイアされた作品だと思います。
この作品も『地獄変』と同様、「死」と「美」をテーマに始まりますが、次第に狂気を帯びていきます。
私の趣味としては、このまま「死」と「美」と「狂気」を推し進めてもらえれば最高でしたが、突然「解き明かし」が始まります。

中村文則はミステリを書きたかったのでしょう。
私とは好む方向性が違ってしまったのが、一読者としてはちょっと残念でした。
でも、これはこれで十分楽しめる作品ではあります。

地獄変』ともう一つ、作品中にカポーティの『冷血』がたびたび登場します。
こちらは未読なので、ぜひ読んでみたいと思いました。

内容にはミステリ要素とは別に、ところどころひっかかるところがあります。
意識して書いているのかもしれませんが、ひっかかりは無くして欲しいなあ、と思いました。
まだまだ若い作家なので、これからぜひ研鑽していただきたいところです。