本とパズルのブログ

人生は一冊の本である。人生は一つのパズルである。

落下する夕方

落下する夕方』(江國香織) <角川文庫> 読了です。

江國香織の作品を読むと、薄っすらとこわさを感じるのは私だけでしょうか。
世界の薄暗い面を見てしまっている気持ちがします。

物語を語っていく主人公が、(私から見ると)世界のセカンドサイドの住民ですから。
もう、冒頭から薄いおかしさがどんどん出てきます。
そして、作品をよりこわいものにしているのは、世界のメインサイドの住民がところどころで顔を出すからです。
リアリティがあるんですよね。

久しぶりに江國作品を読んだので、しばらく読み進めてから「ああ、そうだ、こんな感じだった」と後悔してしまったのですが、ほかにはないこの感覚がだんだんクセになってくるんですよね。
読み終わった今、薄っすらとしたこわさは残っていますし、読んだことの後悔もあるのですが、それでも手放せません。
今年の「手元に残した本リスト」にきっと載ることでしょう。

最初の江國作品は『きらきらひかる』でした。
これは手放してしまったのですが、多分、また手に入れます。
江國香織の毒に犯されている感覚です)

ところで、この『落下する夕方』には、作中に語られていない物語が隠されています。
二箇所、その姿を現していますが、物語られていないので、まったく意味がわかりません。
そこにどんな物語があったのか……。
そういう謎が残されるところもこわいところなのです。