本とパズルのブログ

人生は一冊の本である。人生は一つのパズルである。

風の名前

『風の名前』(高橋順子,佐藤秀明) <小学館> 読了。

 

まほろば歳時記シリーズ」の第二弾。
前作より和歌や俳句が数多く取り入れられており、より情緒的になっている。

例えば
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鹿の角落とし(しかのつのおとし) : 晴れた日中に吹く南西風のことで、山口県柳井市あたりでつかわれた言葉。鹿の角は四月ごろに落ち、初夏にまた新しく生え替わる。その鹿の角を吹き落とすほどの強風。「落とし角」「忘れ角」は季語。
 角落ちし気の衰へや鹿の顔 石井露月(ろげつ)
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荷風(かふう) : 蓮の上を吹き渡る風のこと。蓮の新葉は初め水面に浮く。これが蓮の浮葉、中国ではその形容から銭荷と呼ぶ。茎が成長すると傘をさしたような蓮田の景色となる。
 蓮の葉や水を離れんとして今日も暮る 村上鬼城(きじょう)
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初嵐(はつあらし) : 「初秋風(はつあきかぜ)」と「野分(のわき)」の間に吹き荒れる強風のこと。野分の前触れのように吹く荒い風を指すこともある。秋の季語。
 にはとりのたたら踏みけり初嵐 飴山実
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勁風(けいふう) : 強い風の意。風が持続的に力を見せつけるのは冬であろう。
 家康公逃げ廻りたる冬田打つ 富安風生(ふうせい)
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等々。

写真は風を感じさせるものもあるしそうでないのもあるしで統一感が無かったのだが、作者のあとがきに
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カメラのファインダーを覗きながら、そんな風をそっと探してみる。なんとなくカビくさい風が“ソヨッ”と来たら静かにシャッターを切る。そこに写っているモノはまぎれもなく“風”である。
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とあり、全て実際に風を収めた写真であることが分かった。
これも何とも情緒的。