本とパズルのブログ

人生は一冊の本である。人生は一つのパズルである。

2019-01-01から1年間の記事一覧

今年の総括、手元に残した本、年越本

■ 今年の総括今年読了した本は16冊でした。昨年は読めなくて27冊でしたが、今年はさらに読めない年でした。荘子四冊を読んだこととかスマホデビューして時間の使い方が変わってきたりしたことが影響していると思います。 今年は山尾悠子の作品に出会えたこと…

ポトスライムの舟

『ポトスライムの舟』(津村記久子)<講談社文庫>読了。 うーん、好きなタイプの作風かもしれない。 特に大きな事件が起こるわけでもなく、日常の様子がユーモアを交えながら丁寧に描かれている。作品の世界が一度には説明されず、少しずつ描かれる日常か…

六号病棟・退屈な話

『六号病棟・退屈な話』(チェーホフ / 松下裕訳)<岩波文庫> 読了。 ずっと前にナボコフの『文学講義』を読んだとき、ナボコフが読書に求めているものが私とそっくりなことを嬉しく思った。その『文学講義』の中でとりわけチェーホフを称賛していたので、…

荘子 第三冊(雑篇)

『荘子 第四冊』(金谷治訳注)<岩波文庫> 読了。 今年のゴールデンウィークから読み始めた荘子も、ようやく読了となった。二年前の春以降、いろんなことが起こり、いろんなことを考えて試してきて、ある程度「これでいけるかもしれない」と思えるようにな…

荘子 第三冊(外篇、雑篇)

『荘子 第三冊』(金谷治訳注)<岩波文庫> 読了。 第二冊から引き続き外篇の五篇と、雑篇の三篇が収録されている。 もちろん意図したわけではなく、単に順番に適切な量を収録しているだけだろうが、第二冊と比べると比較的荘子の思想をそのまま述べたもの…

ガードナーの予期せぬ絞首刑

『ガードナーの予期せぬ絞首刑』(マーティン・ガードナー/岩沢宏和,上原隆平 監訳)<日本評論社>読了。 2017年5月の刊行で、二年あまりかけてようやく読み終えた。いろいろ忙しかったり生活スタイルが変わったりしたこともあるが、内容も盛りだくさんで難…

荘子 第二冊(外篇)

『荘子 第二冊(外篇)』読了。 内篇は、自分の小さな物差しを捨てて「それをそのままに見る」ことが主に書かれていると読んだ。その中で、儒者のいう仁義のようなものは「それをそのままに見ていない、ことさらなこと」として戒めていた。そのような表現は…

荘子 第一冊(内篇)

『荘子 第一冊(内篇)』(金谷治訳注)<岩波文庫> 読了。 荘子は大学時代に出会ってその魅力に取りつかれ、幾度となく読んできた。しかし、実際にその考え方を取り入れるとなると難しい。難しいというより、どうやっても現実の生活とは相容れないように思…

江戸川乱歩全集 第7巻

『江戸川乱歩全集 第7巻』(江戸川乱歩)<光文社文庫> 読了。 「何者」は活劇も偏執もない、いわゆる本格物。発表当時の評判はよくなかったそうだが、その動機がなかなか奮っていて興味深い。 「黄金仮面」は発表媒体の性質上、老若男女にウケる作品とい…

すべて真夜中の恋人たち

『すべて真夜中の恋人たち』(川上未映子)<講談社文庫> 読了。 まず、川上未映子がこのような人物を主人公に据えたことに驚いた。 川上未映子が書いたものはいくつか読んだことがあるし(小説は『乳と卵』だけだが)、講演会にも出たことがあるので、彼女…

『卍』(谷崎潤一郎)<中公文庫> 読了。 文豪谷崎潤一郎が書いたレズビアン小説として名高いが、そういう興味からはいってしまうとすぐに飽きてしまうだろう。そういうシーンが無いではないが、直接的な表現はほぼ無いし、あったとしても軽い内容だし、回…

ラピスラズリ

『ラピスラズリ』(山尾悠子)<ちくま文庫> 読了。 研ぎ澄まされた言葉の数々。寡作だとは聞いていたが、一つ一つの言葉をこれほど磨き上げているのであれば、寡作であるのは無理からぬ事だろう。 冒頭は次の一文から始まる。----------「画題(タイトル)…

森鴎外全集6

『森鴎外全集6』(森鴎外)<ちくま文庫>読了。 作品を読むのに、漫画化されたものや映画化されたものや、「五分で読める」ようにまとめられたものを読むだけですませて何が悪いか、という意見がある。 わたしはその答えとして「表現」というものを用意し…