本とパズルのブログ

人生は一冊の本である。人生は一つのパズルである。

2017-01-01から1年間の記事一覧

今年の総括

今年の総括と、「手元に残した本」「年越し本」です。 今年はとにかく、『ジャン・クリストフ』を読んだのがとても大きかったです。「結局、読書なんて趣味だから」とこれまで思っていましたが、趣味でない読書、というものが存在することを知りました。この…

『春の庭』(柴崎友香) <文春文庫> 読了です。 現れてくる一文をじっくり味わいたくなる。しかし、どれだけ味わっても味がなくなることはなく、キリがないので渋々次の一文に移る。そして、次の一文もまたじっくり味わいたくなる。 そんな、一文一文が積み重…

森鴎外全集3

『森鴎外全集3』(森鴎外)<ちくま文庫> 読了です。 最近ますます読むのが遅くなり、読むのに一か月近くかかりました。それでも、一文一文を噛み締めて読むよろこび、作者がどう思ってこの一文を書いたのかを自分なりに辿るよろこびが分かってきたような感じ…

『よろこびの歌』(宮下奈都) <実業之日本社文庫> 読了です。 久しぶりに胸を高ぶらせながら読める作品に出会いました。読み終わって、ちょっと興奮しています。 一時間ほどかけてこの感想を書いていますが、この作品の内容を思い出しながら、指と胸が震えて…

『デミアン』(ヘッセ/高橋健二訳) <新潮文庫> 読了です。 確か最初は高校生のとき、家にあった世界文学全集のようなもので読んだのだと思います。とても感激し、その後大学に入っても(今度はこの文庫で)読み、変わらない感激を覚えました。 それからずいぶ…

日蝕・一月物語

『日蝕・一月物語』(平野啓一郎)<新潮文庫> 読了です。 「日蝕」は芥川賞受賞後すぐに読んだことがあります。概ねストーリーや文体は覚えていましたが、やはり年月が経つと、興味ある部分も変化していました。当時は一風変わった文体やストーリーを面白く読…

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(村上春樹) <文春文庫> 読了です。 『少年カフカ』『アフターダーク』『1Q84』と少し実験的な作品が続いていましたが、久しぶりに「失われる物語」が語られたように思います。 しかし今までの「失われる物語」…

江戸川乱歩全集第3巻 陰獣

『江戸川乱歩全集第3巻 陰獣』(江戸川乱歩) <光文社文庫> 読了です。 3巻にきて、ようやく江戸川乱歩が書きたかったものを書けているのかな、という印象を受けました。 「陰獣」や「芋虫」といったよく知られた乱歩作品のみならず、「踊る一寸法師」「人で…

森鴎外全集2

『森鴎外全集2』(森鴎外) <ちくま文庫> 読了です。小品ですが、「電車の窓」「里芋の芽と不動の目」「桟橋」「花子」「あそび」「身上話」のような作品が私には好みです。文壇を攻撃する「杯」「ル・パルナス・アンビュラン」等の作品は、ちょっとあからさ…

キャスト ドット

キャスト ドット(CAST DOT) Akio Yamamotoのデザイン。 くるくるとよく動くが、外す方向は一か所しかない。 ドットを結ぶラインに微妙な溝が掘ってあり、絶妙な動きで少しずつ外れていく。 迂闊に外してしまうと、今度は元に戻すのに大変な試行錯誤が必要…

雪沼とその周辺

『雪沼とその周辺』(堀江敏幸) <新潮文庫> 読了です。雪沼という山間部の町を舞台にした七つの短編集です。心を揺さぶられる作品もいくつかありますが、ほとんどは淡々と日常が語られているだけです。それにもかかわらず、登場人物には深く共感でき、その日…

1Q84

『1Q84』(村上春樹) <新潮文庫> 読了です。まず初めに、章名について。例えば、「BOOK1 前編」の第1章は目次では次のように書かれています。----------第1章(青豆)見かけにだまされないように----------さて、章名は「(青豆)見かけにだまされないように…

去年の冬、きみと別れ

『去年の冬、きみと別れ』(中村文則) <幻冬舎文庫> 読了です。作品中でもたびたび言及されている、芥川龍之介の『地獄変』にインスパイアされた作品だと思います。この作品も『地獄変』と同様、「死」と「美」をテーマに始まりますが、次第に狂気を帯びてい…

江戸川乱歩全集第2巻 パノラマ島奇譚

『江戸川乱歩全集第2巻 パノラマ島奇譚』(江戸川乱歩)<光文社文庫>読了です。新聞や雑誌の連作小説ということもあり、収録されたどの作品も全体的な構成は考えずに書き始められ、書きながら筋を作っていく、という方法で作られているそうです。「闇に蠢く…

ジャン・クリストフ

『ジャン・クリストフ』[全四冊] (ロマン・ローラン/豊島与志雄訳) <岩波文庫> 読了です。ドイツの小都市に生まれた音楽家ジャン・クリストフ・クラフトの、生誕から死去に至る文字通り一生を描いた作品です。全四冊、二千数百ページを要した長大な作品です…

キャスト シフト

キャスト シフト(CAST SHIFT) 小谷善行とKirill Grebnevのデザイン。 四枚の板の切れ込みを組み合わせて作られている。 一見、ポジションをうまく合わせればすっと外れそうだが(キャスト ラトルのように)、そううまくはいかない。 この形からは想像でき…

「ユリシーズ」演義

『「ユリシーズ」演義』(川口喬一) <研究社出版> 読了です。二十世紀を代表する長編小説、『ユリシーズ』の解説本です。『ユリシーズ』の背景や存在意義などを解説したものではなく、『ユリシーズ』に何が書かれているのか、それがどのような効果を持ってい…

『雲のすべてがわかる本』(武田康男) <成美堂出版> 読了です。今まで読んできた雲の本とちがって、雲がどのようにできているのか、雲がどのようにできていくのか、といった、ちょっと専門的なところまで踏み込んだ本です。また、どのような雲が出てくれば天…