本とパズルのブログ

人生は一冊の本である。人生は一つのパズルである。

2018-01-01から1年間の記事一覧

今年の総括(2018年)

今年の総括と、「手元に残した本」「年越本」です。 ■ 総括今年は忙しくて気分的にまいっていた時期もあり、あまり本を読めませんでした。去年からの年越本を含めて27冊です。また、今年は「これは!」という出会いもありませんでした。逆に、『A』や『教団X…

終わらない歌

『終わらない歌』(宮下奈都)<実用之日本社文庫>読了です。『よろこびの歌』の続編です。 『よろこびの歌』では最後のシーンに向けてどんどん物語を盛り上げていく手法でしたが、『終わらない歌』では一章毎に物語が完結するように作られていました。それでも…

『江戸川乱歩全集 第6巻』(江戸川乱歩) 読了です。 明智小五郎探偵ものの長編二編が収録されています。 解説にも書かれている通り「謎解き」が問われている時代ではなく、冒険活劇と舞台のおどろおどろしさを楽しむ作品なんだろうな、と思います。 「魔術師…

落下する夕方

『落下する夕方』(江國香織) <角川文庫> 読了です。 江國香織の作品を読むと、薄っすらとこわさを感じるのは私だけでしょうか。世界の薄暗い面を見てしまっている気持ちがします。 物語を語っていく主人公が、(私から見ると)世界のセカンドサイドの住民で…

森鴎外全集5

『森鴎外全集5』(森鴎外) <ちくま文庫> 読了です。 「堺事件」は前巻の「興津弥五右衛門の遺書」「阿部一族」からの流れを汲み、事件の生々しさが伝わって読んでいて辛いものがあります。特に切腹のシーンは、フランス公使のみならず、現代の読者にとっても…

幸福論

『幸福論』(アラン / 神谷幹夫訳) <岩波文庫> 再読です。 記録を見返すと、2012年11月に初めて読んだ作品でした。 前回はとにかく新しい考え方のオンパレードで、心を震わせながら読むことができました。今回は、前回よく理解できなかったところも自分なりに…

異邦人

『異邦人』(カミュ/窪田啓作訳) <新潮文庫> 読了です。 私が高校生のときに読書感想文の課題だった作品です。その時以来の再読です。 今読んでみると、訳が本当に難しい。当時も何が起こっているのかがなかなかわからない、というところが逆に楽しかった覚え…

きりこについて

『きりこについて』(西加奈子)<角川文庫> 読了です。 ※※ネタバレを含むので気になる方は読まないでください※ ■ 表現少し北杜夫のユーモアに似ているかな、と思いました。独特の表現で、とてもおもしろいと思います。 ■ 内容不自然とも思える急な展開ですが、…

葬送

『葬送』[全四冊](平野啓一郎)<新潮文庫> 読了です。 ショパンとドラクロワという、ジャンルの異なる二人の天才芸術家の生き方を中心に、芸術論、政治情勢、民族紛争、歴史、旅行記、地理、恋愛、社交界、等等、とにかく濃密な記述に満ちた作品です。一文一…

星新一 ショートショート1001

『星新一 ショートショート1001』[全三冊] (星新一) <新潮社>読了です。 タイトルに「1001」とありますが、文庫未収録作品を含め、1024作品が収録されています。 少しずつ読んで、十数年かかりました。 これだけあると、純粋に「おもしろい!」という作品も…

江戸川乱歩全集 第5巻

『江戸川乱歩全集 第5巻』(江戸川乱歩) <光文社文庫> 読了です。 「押絵と旅する男」はとても不思議な短編です。今ならこういう発想もあるかもしれませんが、江戸川乱歩が書くとなんともいえない妖しいイメージで表現されており、今読んでも十分通用するとて…

カンバセイション・ピース

『カンバセイション・ピース』(保坂和志) <河出文庫>読了です。最近好きになった柴崎友香が影響を受けている作家、ということで読んでみました。 日常の何気ない情景が描かれている、という点で、柴崎友香や堀江敏幸の作風と通じるところがあります。このあ…

『老人と海』(ヘミングウェイ/福田恆存訳) <新潮文庫> 読了です。 実に骨太な作品。「配られたカードで勝負しろ」「塩がなければどうするか」を地で行くサンチャゴ老人には、ただただ憧れるしかありません。気持ちの弱い方にはぜひ読んでいただきたい作品で…

夕暮まで

『夕暮まで』(吉行淳之介) <新潮文庫> 読了です。 「あなたは、騙すことばかり考えているのよ、なにもかも」(P11) この一文に、ふと手が止まりました。普通の流れなら、「なにもかも」ではなく「いつも」とか「だれにでも」になると思います。しかし、ここ…

森鴎外全集4

『森鴎外全集4』(森鴎外) <ちくま文庫> 読了です。 正直、全集3までは鴎外のエリート臭が鼻につく作品も多くありましたが、全集4では肩の力も抜けたようで、どれも傑作といっていいと思います。 人の心情が細やかに表現されており、どの文章を読んでも心…

女のいない男たち

『女のいない男たち』(村上春樹) <文春文庫> 読了です。短編集です。 私の好みでは、「木野」が秀逸だと思いました。なんとも不気味な雰囲気がずっと揺るがず漂っていて、村上ワールドが強からず弱からず出せていたと思います。タイトルも良いです。 短編集…

江戸川乱歩全集第4巻 孤島の鬼

『江戸川乱歩全集第4巻 孤島の鬼』(江戸川乱歩) <光文社文庫>読了です。 「孤島の鬼」と「猟奇の果」が収録されています。 「孤島の鬼」は、最初はロマンチックな感じの密室殺人事件でしたが、だんだん様相を変えてきます。しかし、「闇に蠢く」のような冗…

ファウスト

『ファウスト』[全二冊](ゲーテ)<新潮文庫>読了です。 ※※内容に触れますので、嫌な方は読まないでください。※ 思いの外すらすらと読めました。第一部は波乱万丈・お祭り騒ぎが盛大で、とにかく読んでいて楽しいです。学生をからかったり、魔女の厨の異空間を…