本とパズルのブログ

人生は一冊の本である。人生は一つのパズルである。

異邦人

『異邦人』(カミュ/窪田啓作訳) <新潮文庫> 読了です。

私が高校生のときに読書感想文の課題だった作品です。
その時以来の再読です。

今読んでみると、訳が本当に難しい。
当時も何が起こっているのかがなかなかわからない、というところが逆に楽しかった覚えがあります。
あれから読書経験を積んだ今でも、丹念に読まないと何がどうなっているのか見失いそうです。

ムルソーが自分の感覚を大切にしている、ということは理解できます。
しかし、事件を起こすまでの成り行き任せ、決断放棄と比べて、判決が下った後の自省の細やかさには驚かされました。
それでもあの出来事を反省する訳ではなく、自分の今置かれている状況、これからシステマティックに起こる出来事、を自分の中で処理しようとする冷静さ。
この大きな乖離が、一人の人間に起こっていることとして違和感がないところにカミュの凄さがあるのかな、と思いました。

ムルソーに「もう一つの生活」が可能だったのか、可能だったとしたらどのようなことが起こり、どのような感覚を持ったのか、とても興味があります。

カミュの作品も、またこれからも読んでみたいと思いました。