abさんご・感受体のおどり
『abさんご・感受体のおどり』(黒田夏子) <文春文庫> 読了。
とにかく、個性的な作品。
作者以外のだれもこのような作品を書けないだろう。
どちらも長くても二ページ程度の節からなっているのだが、こんな特徴がある。
・固有名詞が出てこない。
(「感受体のおどり」には、すごく個性的な「人の名前」は出てくる)
・一般名詞も別の表現で書かれることが多い。
・時系列で並んでいない。
・性別が分からない。
かといって全く雲をつかむような作品かというとそんなことはなく、読んでいるうちに全体がぼんやり浮かんできて、登場人物がどんな人なのか、どんな環境にいるのか、幼いころはどうだったのか、晩年はどうだったのかがほんのり匂ってくる。
一文一文を読み解いていくことや一般名詞を別の言葉で表現することに面白さも感じるし、全体から雰囲気が伝わってくるのも楽しいのだが、かなり読む人を選ぶ作品だと思う。