本とパズルのブログ

人生は一冊の本である。人生は一つのパズルである。

くっすん大黒

『くっすん大黒』(町田康)〈文春文庫〉読了。


読み始めてすぐ、その独特の文体がおもしろい。
主人公の一人称で、ぼやいたり毒づいたり、コミカルにストーリーが綴られていく。
奇妙な体験を共にする大学生も味があって、とても好感を持てた。
謎を謎のまま残したり、読者を放り出したようなラストだったりするところも私の好みだ。

正直なところを言えば、女性の造形が相当ぶっ飛んでいるところが気になり、途中からあまり楽しめなくなった。
しかし最後まで読んでみると、その不思議な世界観の中では決して違和感を抱くものではない、と思った。
ある意味、ユングの元型と言えるような存在なのかもしれない。

総じて、読む人をかなり選んでしまう作風だと思う。
併録の「河原のアパラ」も同じような印象だったので、これは作者独特の作風なのだろう。