本とパズルのブログ

人生は一冊の本である。人生は一つのパズルである。

思考の整理学

『思考の整理学』(外山滋比古) <ちくま文庫> 読了。 自力で飛ぶことのできないグライダー人間を育てる学校教育の弊害は昨今よく言われている事だし、「朝起きたら問題が解けていた」という経験をしたことがある人も少なからずおられると思う。そんな調子で始…

マダム・エドワルダ/目玉の話

『マダム・エドワルダ/目玉の話』(バタイユ/中条省平訳) <講談社古典新訳文庫> 読了。 いずれも「エロチック」という言葉だけでは表せないような内容だ。ただのエロチックでもないし、エロチックだけでもない、としか言いようがない。「マダム・エドワルダ…

翔太と猫のインサイトの夏休み

『翔太と猫のインサイトの夏休み』(永井均) <ちくま文庫> 読了。 副題に「哲学的諸問題へのいざない」とあるように、哲学の入門書。哲学というと、当たり前のことをわざとややこしく考えて小難しいことを言うようなイメージがあったが、この作品は全然違う。…

奇妙な本棚

『奇妙な本棚』(伴田良輔) <ちくま文庫> 読了。 著者の本棚にある本が紹介されている。紹介されている本はほとんどが写真集で、あとは絵本、画集、雑誌などが少しあるくらい。タイトルにあるとおり、紹介されているのは「奇妙な」本が多い。排泄物の写真集、…

銀の匙

『銀の匙』(中勘助) <岩波文庫> 読了。 最初は全然響いてこなくて、どうなることかと思った。確かに幼児のみずみずしい感性が丁寧に描かれているとは思ったが……。しかし、半分ぐらい読んで、主人公の人間関係が少し広がってきたころから俄然面白くなってくる…

第七官界彷徨

『第七官界彷徨』(尾崎翠) <河出文庫> 読了。 タイトルから耽美な作品を想像していたのですが、全く違った。どこか北杜夫やクラフト・エヴィング商會を感じさせる、非常にユーモアに満ちた作品だ。兄二人と従兄弟との共同生活をする「女の子」の、なんともコ…

仮面の告白

『仮面の告白』(三島由紀夫) <新潮文庫> 読了。ものすごい本に出会った! と、とても興奮している。毎日朝起きるとこの本が読めると思ってワクワクしていた。そして読む度に深い溜息をついた。ずっと「三島由紀夫はピンと来ない」と思っていて、「この本を最…

鉄塔武蔵野線

『鉄塔武蔵野線』(銀林みのる) <ソフトバンク文庫> 読了。 以前、新潮社から出版され、大変話題になった作品。私も新潮社の単行本を読み、これが二回目となる。単行本版とソフトバンク文庫版では、内容もいくつか変更されているようだが、一番大きな変更は「…

飛ぶ教室

『飛ぶ教室』(エーリヒ・ケストナー/池内紀訳) <新潮文庫> 読了。 クリスマスまでのほんの数日の間に、寄宿舎で起こる様々な事件が描かれている。生徒だけでなく、大人にも素敵なことが起こる。中心となる五人の生徒のキャラがうまく立っていて、楽しく読む…

檀流クッキング

『檀流クッキング』(檀一雄) <中公文庫> 読了。 よく本を読んでいて「電車で泣きそうになって困った」「電車で笑って困った」という話は聞くが、私はこの本を電車で読んでいてお腹が空いて困った。----------檀料理教室は、いつも貧寒で侘しい料理ばかりだと…

紋切型辞典

『紋切型辞典』(フローベール/山田ジャク訳) <平凡社ライブラリー> 読了。 皮肉に満ちた作品なのかと想像していたが、大喜利みたいな感じだった。 言葉をいろんな面から簡潔に捉えていて、とても面白く読めた。 私もこんな辞典をつくってみたい。 紋切型辞典…

柳生忍法帖

『柳生忍法帖』[全二巻] (山田風太郎) <講談社文庫> 読了。 柳生、とタイトルにあるとおり、柳生十兵衛の活躍する物語。 忍法はほとんど関係ない。 柳生十兵衛が一応の主人公だが、悪と対戦するのは、夫や父、主人を殺された女性たち。柳生十兵衛はその後見…

魔界転生

『魔界転生』[全二冊] (山田風太郎) <講談社文庫> 読了。 だいたいの忍法帖シリーズはなんだか書き散らしたかのような印象だが、この作品は骨組みがしっかりしていて読みごたえがあった。 悪も強い、善も強い、強い者同士がぶつかって、さてどう決着するのか…

手紙

『手紙』(東野圭吾) <文春文庫>読了。 東野圭吾にもこんな作品が書けるんだ、とちょっと見直した。 とても良かった。 最初にこの作品を読んでいたら、東野圭吾に対するイメージもだいぶ変わっていただろう。 ただ、あまりにヒットが少ないため、これ以上東野…

白鯨

『白鯨』[全三巻](メルヴィル/八木敏雄訳) <岩波文庫> 読了。 小説というより、鯨事典に物語がはさまってる感じ。 じゃあ退屈なのか、というとそんなことはなく、とてもおもしろく読むことができた。 “鯨事典”のパートでつぶさに鯨を分析しつつも、結局白鯨…

蝉しぐれ

『蝉しぐれ』(藤沢周平) <文春文庫> 読了。 少年の成長を通して、時には淡々と、時にはハラハラドキドキしながら読み進めることができた。 全ての物語が互いに結ばれ、そしてラストシーンで円環が閉じる構成も秀逸。もちろん、文章もうまい。 蝉しぐれ (文春…

容疑者Xの献身

『容疑者Xの献身』 (東野圭吾) <文春文庫> 読了。 「感動する」と聞いてしまった作品は、身構えてしまって、結局「こんなものか」と思ってしまうことも多いのだが、これはきちんと感動することができた。 湯川学って、普段からこんな感じなんだろうか。 それ…

錦繍

『錦繍』(宮本輝) <新潮文庫>読了。 淡々とした物語かと想像していたが、全然違っていた。 生と死が交差する、ものすごく激しい内容だった。 正直、前半は入りこめずに退屈だったが、そこから展開する後半はとても興味深く読めた。 「運命」と「今の生き方」…

殺戮にいたる病

『殺戮にいたる病』(我孫子武丸) <講談社文庫> 読了。 いや~、すっかりだまされてしまった。 途中、「変だな」と思うシーンもあったが、真相には至らず。 最後の最後で驚いてしまい、思わず最初からパラパラとページをめくってみたが、もう「うまく書いてあ…

刺青殺人事件

『刺青殺人事件』(高木彬光) <ハルキ文庫> 読了。 三つの刺青が織りなすトリックが美しい。刺青界のタブーなども興味深い。 密室やアリバイ崩しもあるが、はっきり言ってそのあたりは蛇足。 刺青だけで十分楽しめる作品。 刺青殺人事件 (ハルキ文庫) 高木 彬…

TVピープル

『TVピープル』(村上春樹) <文春文庫> 読了。 久しぶりの村上作品。いい意味で胸がざわざわした。 同じような内容を書ける作家はいるのかもしれないが、これだけ「何か」を残していく作品を書けるのはやっぱり村上春樹だからなんだろうな、と思った。 久しぶ…

白夜行

『白夜行』 (東野圭吾) <集英社文庫> 読了。 いままで読んだ東野圭吾作品の中では抜群の作品。 読み終わった後、ぞぞっと鳥肌が立った。 やればできるじゃないか。 後続作品と言われている『幻夜』もあるが、あまりに『白夜行』が良かったため、イメージを壊…

キッチン

『キッチン』(吉本ばなな) <福武文庫>)読了。 以前、「キッチン」「満月」だけ読んだのだが、今改めて読むと、作者の表現力に魅了される。 中村文則の場合もそうだったが、誤解を恐れずに書いてしまうと、内容は二の次、まずは表現力、言葉の力が大切なんだ…

菊と刀

『菊と刀』 (ルース・ベネディクト/長谷川松治訳) <現代教養文庫> 読了。 タイトルから想起される高尚なイメージとは裏腹に、結構下世話な内容だった。 敗戦直後の話だし、作者が日本で生活されたわけでもないので、やや大げさに理解しているな、と思わせる…

何もかも憂鬱な夜に

『何もかも憂鬱な夜に』(中村文則) <集英社文庫> 読了。 目をそむけたいほど暗い内容だけど、ぐいぐい引き込まれてしまうものすごい文章力。 久しぶりに「本物をみた」という印象を持った。 この作品で、本の読み方というものを教えてもらったような気がする…

三国志演義

『三国志演義』[全七巻] (井波律子訳) <ちくま文庫> 読了。 やっぱりおもしろい! これまで吉川三国志しか読んだことがなかったが、孔明没後にも面白いエピソードはいっぱいある。 それにしても、ちくま文庫は絶版が早い。 良い本をたくさん出すんだけどなあ…

幸福論

『幸福論』 (アラン/神谷幹夫訳) <岩波文庫> 読了。 後頭部を鈍器で殴られたような衝撃。 今までなんてつまらない人生を送っていたのか! もっと早く読んでいたなら、全く違う人生を歩んでいたと思う。 「悲観主義は気分により、楽観主義は意志による」全く…

ネクタイの数学

『ネクタイの数学』(トマス・フィンク,ヨン・マオ/ 青木薫訳) <新潮OH!文庫> 読了。 9ステップまでの結び方を全て網羅し、美的ノット13種や美しさのポイントまで紹介されている。 私もこれを読むまでは「フォアインハンド」でしか結んでなかったのだが、読ん…

イニシエーション・ラブ

『イニシエーション・ラブ』(乾くるみ) <文春文庫> 読了。 途中で「?」な記述が出てきたと思ったら、そういうことだったのかあ。 すっかり騙されてしまった。 それにしてもひどい話だ。 やたらと男にとって都合のいい女性が出てくるな、と思ったら、作者は…

八日目の蝉

『八日目の蝉』(角田光代) <中公文庫> 読了。 男と女では感じ方が違うような気がする。 男の私は最後まで何も見つけることができなかったが、女は何かを見つけることができるのだろうか。 八日目の蝉 (中公文庫) 角田 光代 中央公論新社 Amazonで詳細を見る