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本とパズルのブログ

人生は一冊の本である。人生は一つのパズルである。

ヘンリ・ライクロフトの私記

『ヘンリ・ライクロフトの私記』(ギッシング/平井正穂訳) <岩波文庫> 読了。 作家家業がうまくいかず、ずっと貧困に苦しんでいた"作者"が、友人から遺産年金を送られ、田舎で悠々自適の暮らしを満喫できるようになった、という内容。これだけの紹介だとなん…

神の子どもたちはみな踊る

『神の子どもたちはみな踊る』(村上春樹) <新潮文庫> 読了。 阪神・淡路大震災を契機に書かれた短編集で、どの作品にも少しずつこの地震が出てくる。しかし、決して暗い話ではなく(深刻ではあるかもしれないが)、未来への希望やユーモアさえも感じられるも…

螢・納屋を焼く・その他の短編

『螢・納屋を焼く・その他の短編』(村上春樹) <新潮文庫> 読了。 初期の短編集。長編はほぼ発表順に読んでいるので気づかなかったが、初期のころは結構暗い話が多かったんだなあ、と思った。もちろん、当時から村上ワールドは炸裂だ。あとがきで、最後に「小…

回転木馬のデッド・ヒート

『回転木馬のデッド・ヒート』(村上春樹) <講談社文庫> 読了。 小説ではなく、また、完全な事実だけでもないものを、作者は「スケッチ」と呼んでいる。この作品は、小説になれなかった八つのスケッチを集めたもの。読んでみると、「原則事実に即している」と…

寝ても覚めても

『寝ても覚めても』(柴崎友香) <河出文庫> 読了。 とにかく、ものすごい描写力に驚いた。光を、色を、風を、窓を、夜を、そして季節を、これほどまでに描写できる作家は彼女しかいないかもしれない。一言一句も逃したくないため、それこそむさぼるように読み…

中国行きのスロウ・ボート

『中国行きのスロウ・ボート』(村上春樹) <中公文庫> 読了。村上春樹初の短編集。中編、長編は書いていたとはいえ、短編はまた違った難しさがあるだろうと思うのだが、もうすでに完成されているように感じられる。短編「中国行きのスロウ・ボート」の悲哀は…

カンガルー日和

『カンガルー日和』(村上春樹) <講談社文庫> 読了。 17の掌編と一つの短編集。あとがきには「23編」と書かれているので、文庫落ちするときに5編が除かれたようだ。掌編とはいえ、村上ワールドいっぱいの作品ばかりなので、結構お腹いっぱい。短編は「図書館…

泥の河・螢川・道頓堀川

『泥の河・螢川・道頓堀川』(宮本輝) <ちくま文庫> 読了。 「泥の河」は子供の頃映画で観てトラウマになってしまった作品。読むのに勇気が要ったが、こんなにいい作品だったとは!子供の視点と大人の視点がうまく入り混じり、何とも言えない心地よい悲哀を感…

うたかた/サンクチュアリ

『うたかた/サンクチュアリ』(吉本ばなな) <新潮文庫> 読了。 久しぶりのばなな作品だったので、最初はなかなかとっつき難かったのだが、馴染んでくると、彼女独特の表現が非常に心地よく、楽しく読むことができた。この表現力は本当に「ありそうでない」よ…

ちくま日本文学 004 尾崎翠

『ちくま日本文学 004 尾崎翠』(尾崎翠) <ちくま文庫> 読了。 『第七官界彷徨』<河出文庫> が非常に面白かったので、他の作品も読んでみたくてこれを読んでみた。 小野町子シリーズ・こおろぎ譲・地下室アントンの一夜・歩行・第七官界彷徨・アップルパイの…

風と共に去りぬ

『風と共に去りぬ』[全五巻] (マーガレット・ミッチェル/ 大久保康雄,竹内 道之助訳) <新潮文庫> 読了。 読む前は、アメリカ南北戦争を舞台とした恋愛小説というイメージを持っていて、積読処理のつもりだった。しかし、読んでみるととんでもない!南北戦争…

春琴抄・吉野葛

『春琴抄・吉野葛』(谷崎潤一郎) <中公文庫> 読了。 谷崎というと「美しい文章」というイメージがあったが、私には「素直な文章」という印象を受けた。全くどこにも引っかかりがなく、ごく自然に読んでいけるのだ。しかし、これが当たり前のことだと思っては…

海辺のカフカ

『海辺のカフカ』[全二冊] (村上春樹) <新潮文庫> 読了。 久々の村上作品です。疲れを感じた。もちろん、心地よい疲れだ。村上春樹って、こんなに濃い作風だったかな。もっとライトな感じだったと思うのだが。以前は「意味あり気」なのが面白くて読んでいた…

熊の敷石

『熊の敷石』(堀江敏幸) <講談社文庫> 読了。 主人公の生活が細かく淡々と語られ、一体どこに向かっているのか不安で仕方がなかった。というか、正直退屈ですらあった。しかし、今までの積み重ねから突然ピークが現れ、深く心を揺さぶられる。それでもまだま…

月の名前

『月の名前』(高橋順子,佐藤秀明) <デコ> 読了。 「まほろば歳時記」第四弾。「月」というとそれだけで情緒があるが、本一冊書けるのかなあ、という気もする。しかし、いろんな「月」が集められ、うまく構成された作品だった。写真もいろんな月が写されてお…

太宰治全集1

『太宰治全集1』<ちくま文庫> 読了。 ずっと以前に『人間失格』を読んだのだが、その時はピンと来なかった。それでも、多くの人に好意的に読まれている事もあり、消費税増税の前に思い切って購入した全集だ。前に読んだ三島由紀夫の『仮面の告白』が非常に…

風の名前

『風の名前』(高橋順子,佐藤秀明) <小学館> 読了。 「まほろば歳時記シリーズ」の第二弾。前作より和歌や俳句が数多く取り入れられており、より情緒的になっている。例えば----------鹿の角落とし(しかのつのおとし) : 晴れた日中に吹く南西風のことで、山口…

ナボコフの文学講義

『ナボコフの文学講義』[全二冊](V・ナボコフ/野島秀勝訳) <河出文庫> 読了。 この作品では次の七作品が講義されている。■ ジェイン・オースティン『マンスフィールド荘園』■ チャールズ・ディケンズ『荒涼館』■ ギュスターヴ・フロベール『ボヴァリー夫人』…

雨の名前

『雨の名前』(高橋順子,佐藤秀明) <小学館> 読了。 まほろば歳時記の第一集。さまざまな雨の名前を四季ごとに集め、簡単な解説が付けられている。例えば、■春霖(しゅんりん) : 春霖雨(はるりんう)ともいう。こまかく烟るように降りつづく三、四月ころの長雨…

塩一トンの読書

『塩一トンの読書』(須賀敦子) <河出文庫> 読了。 くねるような文体がなかなか頭に入ってこず、文字を目で追うだけでいつの間にか半分ぐらい読み進めてしまった。「これじゃいかん」と、最初に戻ってもう一度丁寧に読み直してみた。するとどうだ。一文の中に…

新解さんリターンズ

『新解さんリターンズ』(夏石鈴子) <角川文庫> 読了。 新明解国語辞典の六版に伴い、五版以前から六版への変更点を調べた作品です。 作者の新明解国語辞典への思いは、「新解さんエッセイ」中の----------『新明解国語辞典』は姿は辞書だけど、本当は新解さ…

せどり男爵数奇譚

『せどり男爵数奇譚』(梶山李之) <ちくま文庫> 読了。 本に魅入られた男の短編集。あっと驚くような展開が待っているわけでもなく、淡々と話が続いて行くが、本が好きな方なら「分かる分かる」とニヤニヤすること間違いなし。神保町で見かける古書店なんかも…

一九八四年

『一九八四年』(ジョージ・オーウェル/高橋和久訳) <ハヤカワepi文庫> 読了。 いかに「情報」が大事か。「情報」に付随する「解釈」をそのまま受け取ることなく、あくまで参考にして、自分で解釈することがとても重要なことである。できれば、「情報」のソー…

思考の整理学

『思考の整理学』(外山滋比古) <ちくま文庫> 読了。 自力で飛ぶことのできないグライダー人間を育てる学校教育の弊害は昨今よく言われている事だし、「朝起きたら問題が解けていた」という経験をしたことがある人も少なからずおられると思う。そんな調子で始…

マダム・エドワルダ/目玉の話

『マダム・エドワルダ/目玉の話』(バタイユ/中条省平訳) <講談社古典新訳文庫> 読了。 いずれも「エロチック」という言葉だけでは表せないような内容だ。ただのエロチックでもないし、エロチックだけでもない、としか言いようがない。「マダム・エドワルダ…

翔太と猫のインサイトの夏休み

『翔太と猫のインサイトの夏休み』(永井均) <ちくま文庫> 読了。 副題に「哲学的諸問題へのいざない」とあるように、哲学の入門書。哲学というと、当たり前のことをわざとややこしく考えて小難しいことを言うようなイメージがあったが、この作品は全然違う。…

奇妙な本棚

『奇妙な本棚』(伴田良輔) <ちくま文庫> 読了。 著者の本棚にある本が紹介されている。紹介されている本はほとんどが写真集で、あとは絵本、画集、雑誌などが少しあるくらい。タイトルにあるとおり、紹介されているのは「奇妙な」本が多い。排泄物の写真集、…

銀の匙

『銀の匙』(中勘助) <岩波文庫> 読了。 最初は全然響いてこなくて、どうなることかと思った。確かに幼児のみずみずしい感性が丁寧に描かれているとは思ったが……。しかし、半分ぐらい読んで、主人公の人間関係が少し広がってきたころから俄然面白くなってくる…

第七官界彷徨

『第七官界彷徨』(尾崎翠) <河出文庫> 読了。 タイトルから耽美な作品を想像していたのですが、全く違った。どこか北杜夫やクラフト・エヴィング商會を感じさせる、非常にユーモアに満ちた作品だ。兄二人と従兄弟との共同生活をする「女の子」の、なんともコ…

仮面の告白

『仮面の告白』(三島由紀夫) <新潮文庫> 読了。ものすごい本に出会った! と、とても興奮している。毎日朝起きるとこの本が読めると思ってワクワクしていた。そして読む度に深い溜息をついた。ずっと「三島由紀夫はピンと来ない」と思っていて、「この本を最…

鉄塔武蔵野線

『鉄塔武蔵野線』(銀林みのる) <ソフトバンク文庫> 読了。 以前、新潮社から出版され、大変話題になった作品。私も新潮社の単行本を読み、これが二回目となる。単行本版とソフトバンク文庫版では、内容もいくつか変更されているようだが、一番大きな変更は「…

飛ぶ教室

『飛ぶ教室』(エーリヒ・ケストナー/池内紀訳) <新潮文庫> 読了。 クリスマスまでのほんの数日の間に、寄宿舎で起こる様々な事件が描かれている。生徒だけでなく、大人にも素敵なことが起こる。中心となる五人の生徒のキャラがうまく立っていて、楽しく読む…

檀流クッキング

『檀流クッキング』(檀一雄) <中公文庫> 読了。 よく本を読んでいて「電車で泣きそうになって困った」「電車で笑って困った」という話は聞くが、私はこの本を電車で読んでいてお腹が空いて困った。----------檀料理教室は、いつも貧寒で侘しい料理ばかりだと…

紋切型辞典

『紋切型辞典』(フローベール/山田ジャク訳) <平凡社ライブラリー> 読了。 皮肉に満ちた作品なのかと想像していたが、大喜利みたいな感じだった。 言葉をいろんな面から簡潔に捉えていて、とても面白く読めた。 私もこんな辞典をつくってみたい。 紋切型辞典…

柳生忍法帖

『柳生忍法帖』[全二巻] (山田風太郎) <講談社文庫> 読了。 柳生、とタイトルにあるとおり、柳生十兵衛の活躍する物語。 忍法はほとんど関係ない。 柳生十兵衛が一応の主人公だが、悪と対戦するのは、夫や父、主人を殺された女性たち。柳生十兵衛はその後見…

魔界転生

『魔界転生』[全二冊] (山田風太郎) <講談社文庫> 読了。 だいたいの忍法帖シリーズはなんだか書き散らしたかのような印象だが、この作品は骨組みがしっかりしていて読みごたえがあった。 悪も強い、善も強い、強い者同士がぶつかって、さてどう決着するのか…

手紙

『手紙』(東野圭吾) <文春文庫>読了。 東野圭吾にもこんな作品が書けるんだ、とちょっと見直した。 とても良かった。 最初にこの作品を読んでいたら、東野圭吾に対するイメージもだいぶ変わっていただろう。 ただ、あまりにヒットが少ないため、これ以上東野…

白鯨

『白鯨』[全三巻](メルヴィル/八木敏雄訳) <岩波文庫> 読了。 小説というより、鯨事典に物語がはさまってる感じ。 じゃあ退屈なのか、というとそんなことはなく、とてもおもしろく読むことができた。 “鯨事典”のパートでつぶさに鯨を分析しつつも、結局白鯨…

蝉しぐれ

『蝉しぐれ』(藤沢周平) <文春文庫> 読了。 少年の成長を通して、時には淡々と、時にはハラハラドキドキしながら読み進めることができた。 全ての物語が互いに結ばれ、そしてラストシーンで円環が閉じる構成も秀逸。もちろん、文章もうまい。 蝉しぐれ (文春…

容疑者Xの献身

『容疑者Xの献身』 (東野圭吾) <文春文庫> 読了。 「感動する」と聞いてしまった作品は、身構えてしまって、結局「こんなものか」と思ってしまうことも多いのだが、これはきちんと感動することができた。 湯川学って、普段からこんな感じなんだろうか。 それ…

錦繍

『錦繍』(宮本輝) <新潮文庫>読了。 淡々とした物語かと想像していたが、全然違っていた。 生と死が交差する、ものすごく激しい内容だった。 正直、前半は入りこめずに退屈だったが、そこから展開する後半はとても興味深く読めた。 「運命」と「今の生き方」…

殺戮にいたる病

『殺戮にいたる病』(我孫子武丸) <講談社文庫> 読了。 いや~、すっかりだまされてしまった。 途中、「変だな」と思うシーンもあったが、真相には至らず。 最後の最後で驚いてしまい、思わず最初からパラパラとページをめくってみたが、もう「うまく書いてあ…

刺青殺人事件

『刺青殺人事件』(高木彬光) <ハルキ文庫> 読了。 三つの刺青が織りなすトリックが美しい。刺青界のタブーなども興味深い。 密室やアリバイ崩しもあるが、はっきり言ってそのあたりは蛇足。 刺青だけで十分楽しめる作品。 刺青殺人事件 (ハルキ文庫) 高木 彬…

TVピープル

『TVピープル』(村上春樹) <文春文庫> 読了。 久しぶりの村上作品。いい意味で胸がざわざわした。 同じような内容を書ける作家はいるのかもしれないが、これだけ「何か」を残していく作品を書けるのはやっぱり村上春樹だからなんだろうな、と思った。 久しぶ…

白夜行

『白夜行』 (東野圭吾) <集英社文庫> 読了。 いままで読んだ東野圭吾作品の中では抜群の作品。 読み終わった後、ぞぞっと鳥肌が立った。 やればできるじゃないか。 後続作品と言われている『幻夜』もあるが、あまりに『白夜行』が良かったため、イメージを壊…

キッチン

『キッチン』(吉本ばなな) <福武文庫>)読了。 以前、「キッチン」「満月」だけ読んだのだが、今改めて読むと、作者の表現力に魅了される。 中村文則の場合もそうだったが、誤解を恐れずに書いてしまうと、内容は二の次、まずは表現力、言葉の力が大切なんだ…

菊と刀

『菊と刀』 (ルース・ベネディクト/長谷川松治訳) <現代教養文庫> 読了。 タイトルから想起される高尚なイメージとは裏腹に、結構下世話な内容だった。 敗戦直後の話だし、作者が日本で生活されたわけでもないので、やや大げさに理解しているな、と思わせる…

何もかも憂鬱な夜に

『何もかも憂鬱な夜に』(中村文則) <集英社文庫> 読了。 目をそむけたいほど暗い内容だけど、ぐいぐい引き込まれてしまうものすごい文章力。 久しぶりに「本物をみた」という印象を持った。 この作品で、本の読み方というものを教えてもらったような気がする…

三国志演義

『三国志演義』[全七巻] (井波律子訳) <ちくま文庫> 読了。 やっぱりおもしろい! これまで吉川三国志しか読んだことがなかったが、孔明没後にも面白いエピソードはいっぱいある。 それにしても、ちくま文庫は絶版が早い。 良い本をたくさん出すんだけどなあ…

幸福論

『幸福論』 (アラン/神谷幹夫訳) <岩波文庫> 読了。 後頭部を鈍器で殴られたような衝撃。 今までなんてつまらない人生を送っていたのか! もっと早く読んでいたなら、全く違う人生を歩んでいたと思う。 「悲観主義は気分により、楽観主義は意志による」全く…