本とパズルのブログ

人生は一冊の本である。人生は一つのパズルである。

太宰治全集8

『太宰治全集8』(太宰治) <ちくま文庫> 読了です。「パンドラの匣」は終戦直後でも希望を失わずに生きていこう、という強い意志を感じる名作ですし、他の短編・掌編も好ましい作品が多いです。しかし、「男女同権」から急に雰囲気が変わります。人間の暗い…

雲と暮らす。

『雲と暮らす。』(武田康男) <誠文堂新光社> 読了です。雲に関する著作が数多くある著者の、雲への愛が深く感じられる作品です。図鑑では典型的な雲の写真ばかりで、普段目にする雲が何という名前か判断に迷うこともありますが、この作品は普段よく見る雲の…

悪と仮面のルール

『悪と仮面のルール』(中村文則) <講談社文庫> 読了。 最初はなかなか物語に入っていけなくてどうなることかと思ったが、「第三部」に入ってから面白くなってきた。 中村文則は一貫したテーマを持っていて、この作品もその中で何とか答えを出そうとしている…

太宰治全集7

『太宰治全集7』(太宰治) <ちくま文庫> 読了。 長編「津軽」「惜別」と、短編集「お伽草子」が収録されている。 「津軽」は作者の地元愛がしみじみと感じられる傑作。 初期の「富嶽百景」に匹敵する印象を受けた。 「惜別」は私と中国人留学生と先生と、そ…

掏摸

『掏摸』(中村文則) <河出文庫> 読了。「スリ」と読む。スリはもちろん犯罪だが、その驚くべき技術に感心もし、どこか滑稽味も感じる、とても不思議な犯罪だ。しかし、この作品は「スリ」という言葉から想起されるイメージよりもずっと暗く、ただただ重たい…

太宰治全集6

『太宰治全集6』(太宰治) <ちくま文庫> 読了。この巻は何といっても大作「右大臣実朝」が問題になる。太宰治が実朝に惚れこんで、吾妻鏡を基に書かれた作品。かなり思い入れがあって力を入れて書いたんだろうな、という雰囲気は十分感じられるが、私にはそ…

ガードナーの新・数学娯楽

『ガードナーの新・数学娯楽』(マーティン・ガードナー/岩沢宏和,上原隆平監訳)<日本評論社> 読了。数学ゲーム全集の第三巻。なかなか出版されなくてやきもきしていたが、ちゃんと出版されて良かった。今後どれくらいの周期で出版されていくのだろうか……。以…

村のエトランジェ

『村のエトランジェ』(小沼丹) <講談社文芸文庫> 読了。初期の作品集のため、様々な文体で表されているが、ほとんどどの作品も面白く読めた。特に「紅い花」「白孔雀のいるホテル」「村のエトランジェ」は傑作。小沼丹(おぬまたん)はいわゆる第三の新人に…

太宰治全集5

『太宰治全集5』(太宰治) <ちくま文庫> 読了。太宰治と言うと、何だか暗い作風を思ってしまうが、暗いというよりむしろいじけたような作品が多い。しかし、全集五巻では、「正義と微笑」のような未来への希望溢れる作品や、「黄村先生言行録」「花吹雪」「…

最後の命

『最後の命』(中村文則) <講談社文庫> 読了。少年期に秘密基地近くで親友と共有したある事件。それが成長する二人を引き離し、また引きつける。少年期の友達という、ほのかに漂う甘酸っぱさが何ともいえない感情を引き起こす。これまでの作品から引き継がれ…

『太宰治全集4』(太宰治) <ちくま文庫> 読了。「新ハムレット」はシェイクスピアの「ハムレット」に題材を取った意欲作だが、やはり元が有名過ぎるし良過ぎるので、相当な違和感があった。ちょっと太宰治には荷が重かったかな。それでも、最後の事件から真…

光車よ、まわれ!

『光車よ、まわれ!』(天沢退二郎) <ブッキング> 読了。子供向けのファンタジー長編ですが、大人でも十分楽しめる。一体何が起こっているのか、何に襲われているのか、敵の目的は何なのか、光車を手に入れるとどうなるのか、龍子とは一体何者なのか、全く分…

プールサイド小景・静物

『プールサイド小景・静物』(庄野潤三) <新潮文庫> 読了。最初に収録されている「舞踏」から、いきなり魅了された。この感性はすごい!小説だが、一篇の詩を読んでいるようだ。どの作品も、日常にしっかりと足を下しながら、しかも日常に潜む密かな非日常を…

悪意の手記

『悪意の手記』(中村文則) <新潮文庫> 読了。総ページ数190の短編ですが、読むのに三日かかった。 厚くてもすぐ読める作品もあれば、薄くても時間のかかる作品もあるものだ。正直、この作品はうまく消化しきれていない。自分の中に取り込むには、かなり長い…

太宰治全集3

『太宰治全集3』(太宰治) <ちくま文庫> 読了。全集を読んでいると、「走れメロス」のような作品がかなり異色であることがわかる。「畜犬談」はユーモラスな中に、ほろっとさせる作品。太宰が嫌いな方にもおすすめだ。「駈込み訴え」は緊迫感あふれる作品。…

終の住処

『終の住処』(磯崎憲一郎) <新潮文庫> 読了。「終の住処」と「ペナント」の二短編が収録されている。デヴィッド・リンチの映画を観たかのような読感だった。実は、「終の住処」を読んだときはうまくとらえることができず、ただただ困惑していたのだが、「ペ…

土の中の子供

『土の中の子供』(中村文則) <新潮文庫> 読了。コテンパンに打ちのめされた。ものすごい作品!この小説に比べたら、世に出回っている大半の小説はヤワい。本当に、中村文則の作品に出会えて良かったと思った。 土の中の子供 (新潮文庫) 中村 文則 新潮社 Ama…

太宰治全集2

『太宰治全集2』(太宰治) <ちくま文庫> 読了。「創世記」や「喝采」は何を言いたいのかさっぱり分からなかったが、それでも言葉の選び方や配置、文章のリズムで読ませるところはすごいと思った。特に良かったのは「富嶽百景」。富士山を中心に、主人公の日…

Bolero

『Bolero』(吉田音) <筑摩書房> 読了。作者が「吉田音」になっているが、クラフト・エヴィング商會の作品。一応、中学生の娘さん、という設定になっている。SIDE AとSIDE Bにストーリーが分かれていて、SIDE Aは吉田音と円田さんと黒猫シンクの話、SIDE BはS…

残穢

『残穢』(小野不由美) <新潮文庫> 読了。内容に踏み込む作品ではないので詳しくは書けないが、起伏はあったものの、きっちり最後まで読むとなかなか興味深い作品だった。作品中でちょっと触れられていた、“「四谷怪談」のような「話」自体が怪であるものがあ…

鬼談百景

『鬼談百景』(小野不由美) <角川文庫> 読了。怪談集。まあ、よくある怪談かな、といった感じだ。怪談の最後に「実はこうだった」というオチ(怪談的な意味で)をつけないのは好感がもてる。最近はオチをつけないのが流行りなのかな。理由が分からないのはよ…

芥川龍之介全集6

『芥川龍之介全集6』(芥川龍之介) <ちくま文庫>読了。「ぼんやりした不安」を感じて自殺したのは有名な話だが、「歯車」などを読むと、結構はっきりした不安のようにも思われた。全集6の前半では、どこか「死」を幻想的でメルヘンチックなとらえ方をしてい…

抱擁家族

『抱擁家族』(小島信夫) <講談社文芸文庫> 読了。最初はなかなか入り込めなかったが、最初の話題から次の話題に移ったころから俄然面白くなり、そこからは最後まで興味深く読むことができた。淡々とした文体は、誰が何をしゃべっているのか分からなくなるく…

遮光

『遮光』(中村文則) <新潮文庫> 読了。デビュー二作目。一作目の「銃」と同じく、日常に紛れ込んだ異物によって毀されていく様子が描かれている。しかし、「銃」が次第に毀されていったのに対し、この作品では初めから毀れていた様子が伺える。いずれにしろ…

芥川龍之介全集5

『芥川龍之介全集5』(芥川龍之介) <ちくま文庫> 読了。「六の宮の姫君」は有名ですが他はあまり聞かない作品が多い。しかし、人間模様を描いた、このころの作品が私には好ましく思われた。小説は次の第六巻で終わり。これから死へ向かう時期にかけて、どの…

『銃』(中村文則) <河出文庫> 読了です。「銃」と「火」が収録されている。「銃」はとにかくものすごい! 拳銃によって毀れていく様子が一人称で語られていくその手法は、やはり中村文則でしか書けなかったんじゃないかと思わされる。読後はぞわっと鳥肌が立…

芥川龍之介全集4

『芥川龍之介全集4』(芥川龍之介) <ちくま文庫> 読了。流石にこの時期になるとかなり熟している作品が多く、味わい深く読むことができた。「杜子春」や「往生絵巻」、「藪の中」といったよく知られた作品も多いが、あまり聞かない作品の中にも、「捨児」「…

芥川龍之介全集3

『芥川龍之介全集3』<ちくま文庫> 読了。「蜜柑」を除いてはあまり有名ではない作品ばかりだが(私が無知なだけかもしれないが)、「沼地」「疑惑」「路上」(完成しなかったのが惜しい)等々、傑作も数多く収録されている。いろんなタイプの作品を描き分ける芥…

乳と卵

『乳と卵』(川上未映子)<文春文庫> 読了。ずっと女性の性が赤裸々に綴られていて、やっぱり男の私としては辛いものがあった。しかし、最後のあの爆発!これで一気に印象が変わった。最初からの流れをうまく汲み取りながら、最後のあのシーンにつなげるセンス…

芥川龍之介全集2

『芥川龍之介全集2』<ちくま文庫> 読了。第一巻ではやや「書き過ぎ」のきらいがあったが、第二巻では明示するのではなく、文脈の中で読者が自身の考えを持てるようにうまく書かれてあるように思われた。「或日の大石内蔵助」や「戯作三昧」のように、人の心…